ハプンスタンス・アプローチと成長の危機(リクルートワークス研究所)

スタンフォード大クランボルツ教授により提唱されているキャリア理論「Planned Happenstance Theory」をベースとしてまとめられたWorksのレポート。前後編と分かれており、前編は慶応義塾大学SFC研究所キャリアリソースラボラトリーのシンポジウム「ハプンスタンス・アプローチの最新動向」(6月28日、慶応義塾大学三田キャンパスで開催)でのクランボルツ教授の講演レポート。後編は、ハプンスタンス・アプローチ的に生きてきた二人の社長の物語と、高橋俊介さんによるまとめ(Wrap−Up)。
前編 提唱者クランボルツ教授の講演レポート
後編 個性派社長2人のハプンスタンスin沖縄
 (1) 竹田誠さん(マコト・オリジナル・グッズ社長)
 (2) 三上伸司さん(ブルーム社長)
 (3) 高橋俊介先生のWrap-Up

Planned Happenstance Theoryのエッセンスを講演レポートから引用すると次のようになる。

「キャリアは計画通りにはいかないものだから、特に人生の早い段階で理想的な職業を見極めようとすることは、困難であり意味がないこと」と強調した。これまで優柔不断であると見なされてきたキャリア目標を決められない人を、ハプンスタンス・アプローチでは"オープンマインド"だと肯定的にとらえる。ハプンスタンス・アプローチ流キャリアカウンセリングでは、複雑で予測不可能な将来に対する賢明な対応として、あえて決めないことを認める。そのうえで、想定外のキャリアチャンスをつくり出すために、行動を起こすことが大切だとする。「とにかく行動すること。そこからすべてが始まる」と、行動することの重要性に繰り返し触れた。

ではその「行動」ができずに立ち止まっているニートに対してはどういうアプローチが考えられるのか。講演レポート内での質疑応答で、ニートへの支援についてこのようなやりとりがあった。

質問 ニートのように行動を起こすことを恐れている人々には、どうアドバイスしたらよいのでしょうか。
教授 既存のシステムの中で完全にやる気を失ってしまっているニートなどには、慎重に対応するべきだ。一度の拒絶や失敗が、彼らのやる気をさらになくしてしまう恐れがある。行動は達成可能な小さなことにした方がよい。電話をかけるなど簡単なことから始めるようにアドバイスをして、彼らが達成できるようそばにいて手助けすることも忘れないでほしい。

そうそう、6/30の講演会では、これまでのキャリア意思決定理論でよく言われていた「Follow your dream」ではなく「Test steps in your dream」なのだと言っていた。あとは「Don't "stuck" objective(目標達成型であることにこだわりすぎるな)」とか「誰でも『成功体験』はある。smaller scale successに目を向けることが大事。」など、さまざまに示唆的なことを言っており、さすが長年現場で研究をしてきただけあると感じた。

高橋さんのWrap-Upは、一見破天荒に見える二人の経営者のキャリアストーリーをPlanned Happenstance理論の切り口から分析し、さまざまな教訓を読み取っている。「事態を打開するのはいつも人との出会い」「自ら動いて変化を呼び込んみ、壁にぶつかったときには立ち止まるのではなく行動によって次の展開を呼び込む」「常に期限を決めて準備を進める。期限までに目標がかなわなかったときには別のことをしようという柔軟性がある」等々。経営者に限らず会社員も同様のことが言えると思う。