「心理援助の専門職として働くために-臨床心理士・カウンセラー・PSWの実践テキスト (臨床心理学レクチャー)」

米国大学院で臨床心理学のテキストに使われている本。姉妹編は「心理援助の専門職になるために-臨床心理士・カウンセラー・PSWを目指す人の基本テキスト (臨床心理学レクチャー)」。

心理援助の専門職として働くために-臨床心理士・カウンセラー・PSWの実践テキスト (臨床心理学レクチャー)

心理援助の専門職として働くために-臨床心理士・カウンセラー・PSWの実践テキスト (臨床心理学レクチャー)

  • 作者: マリアン・コーリィ,ジェラルド・コーリィ,下山晴彦
  • 出版社/メーカー: 金剛出版
  • 発売日: 2004/09/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「なるために」は援助専門職(原書では“helping profession“)になりたいと思う動機は何か、自己理解を深める道すじとその必要性、また倫理問題や転移/逆転移、価値観の及ぼす影響、さらには現場実習やスーパービジョンの活用法などについて事例を通して考えていく、というスタイルで深めていくようになっている。こちらの「働くために」はコミュニティや組織、家族などの実際の援助の場面で求められる専門性について書かれている。
また、Ericksonの心理学的発達理論をベースにHamachekが概念化した自己概念並びに自我発達の程度の評価指標は、トランジション対応に有益な視点を与えてくれる。
さらに有益なのは援助専門職自身のストレスやバーンアウトに注目しセルフケアへの助言も行われているところ。援助専門職の多くは自分自身が困った時に他社に援助を求めることができないという弱点を持っているという。(「傷ついた癒し主」というメタファーが使われていたのが印象的)そして、そのような援助専門職自身がストレスと積極的に対決する「攻略型ストレス対処法」としてこのような項目を挙げている。

  1. 自己モニターをする(自分の反応を継続的に記録)
  2. 具体的な活用資源を考える
  3. ストレスに過敏に反応しないようにする(リラクゼーションの習得)
  4. 問題解決法を身につける(原因特定→具体的現実的目標設定→手順の考察→解決法の評価、順位付け、階層化→イメージ→行動→「失敗や落とし穴はつきもの」そしてうまく行った時は素直に自分をほめる)
  5. 認知の変容を試みる(思考パターンの中のirrational belief<非現実的信念>の検証→現実的な考えに近づける)

そして、「バーンアウトを避けて新鮮な気持ちで心理援助の仕事ができるようにするためのヒント」として次のようなことが書かれている。

  1. 毎日、少しずつ運動をする。
  2. 睡眠を充分に取り、健康な食生活を心掛ける。
  3. 趣味のために時間を使う。(スポーツ、音楽、読書、買い物、ドライブ、旅行など)
  4. 友人家族と外出して楽しい時間を持つ。ハイキング、買い物など。
  5. 「No」を言うことを練習する。時間がない時は仕事を引き受けないようにする。
  6. 時間のマネージメントをして、自分のための時間をつくる。休暇もスケジュールの中に入れる。
  7. 自宅に仕事をもっていかずに仕事は職場で終えるようにする。
  8. 上手くいった時などに、自分に褒美を与える。

姉妹編と共通して自己理解を深めるための視点が一貫して持たれ、他人に関わる人間は何より自分を知らないといけないことを痛感させられる。タイトル通りの実践テキスト。